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2017年2月20日月曜日

クムラン文書の再吟味 Bernstein, Reading and Re-reading Scripture at Qumran

  • Moshe J. Bernstein, Reading and Re-reading Scripture at Qumran (Studies on the Texts of the Desert of Judah 107; Leiden: Brill, 2013).
Reading and Re-Reading Scripture at Qumran (Studies of the Texts of Thedesert of Judah)Reading and Re-Reading Scripture at Qumran (Studies of the Texts of Thedesert of Judah)
Moshe J. Bernstein

Brill Academic Pub 2013-06-21
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本書は著者の死海文書に関する論文集である。本書で扱われている問題は広い範囲に渡る。たとえば、「再説聖書(Rewritten Bible)」という用語は、Geza Vermesによって用いられてから、さまざまな研究者たちによって極めてルーズに使わてきた結果、文学ジャンルを指す用語というよりは、むしろそのプロセスとして理解されているが、著者はVermes当時のより狭義の意味合いに戻すべきだと指摘する。

『創世記注解A』とも呼ばれる4Q252について、著者はそれを、テクストにおける謎を解決しようとするシンプルな意味での「注解」と見なされるべきであるという。そして単純にある人物/たちによって著された書物というより、さまざまな文書から素材を抜粋して編集されたものであるという。

『外典創世記』については、しばしば研究者たちは同書に見られるアラム語での聖書引用から当時アラム語タルグムがあったことを示そうとするが、著者はこの見解を否定している。しかし、『外典創世記』のようなアラム語「再説聖書」の存在がタルグム的な聖書解釈アプローチに影響を与えた可能性は否定していない。

ラビ文学との関係については、アケダーにおける天使の記述に関するなどを検証した結果、ラビ文学に保存されている解釈伝統は、『ヨベル書』などにすでに表されていることを指摘している。

以上のような細々とした検証とは別に、著者の研究の大きな特徴は、死海文書を扱う際にある文書をどう分類し、そのデータを解釈するかという点を重視することである。著者は読者に対し、常にまずデータを分類し、基本的な分析のカテゴリーを作成することを思い出させる。

この姿勢は、著者の「ジャンル(genre)」の問題への関心と結びついている。著者は、ある文書をどのジャンルに分類するかをひとつのゴールに設定しており、そうした方法論が生産的であることを認めつつも、そうしたジャンルの理論というものが古代における文書の作者自身の問題ではなく、結局のところ現代の読者の学問的な分析の道具に過ぎないことも意識している。このことは、著者が重視する他の用語である「様式(form)」と「方法論(method)」にも言えることである。

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