- Henry W. Morisada Rietz, "Identifying Compositions and Traditions of the Qumran Community: The Song of the Sabbath Sacrifice as a Test Case," in Qumran Studies: New Approaches, New Questions, Michael Thomas Davis and Brent A. Strawn (Grand Rapids, MI: Eerdmans, 2007), pp. 29-52.
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共同体で作成された宗派的文書。死海文書の著者性を決定するよすがとして最も便利なのは、テクニカル・タームである。クムラン共同体で実際に作成されたと考えられる、いわゆる「宗派的(sectarian)巻物」には、ヤハッド、セレフ、メバケル、マスキール、パキッド、ブネイ・オール、ブネイ・エメット、ブネイ・ホシェフ、ブネイ・ツェデク、ドルシェイ・ハハラコット、モレー・ハツェデク、ハコーヘン・ハラシャアといった言葉が用いられている。さらに二元論や予定説的な言葉や、聖書解釈におけるペシェルといった言葉も頻出する。D. Dimantによれば、宗派的巻物の特徴は、第一に、アラム語ではなくヘブライ語で書かれていること、第二に、黙示的な文書でないこと、第三に、上のタームを含んでいなくても、ハラハー、暦法、年代、占星術に関係していることであるという。
共同体で作成されたわけではないがその伝統として機能していた文書。ある文書が実際に共同体内部で用いられていたかどうかを見分ける基準として、著者は三点を挙げている。第一に、現存する写本の数、第二に、その写本がクムランで実際に筆写された証拠、そして第三に、クムランで作成された文書の中にその文書の言及、暗示、引用などがあることである。第一の点に関して、写本数として抜きん出ているのは、詩篇、申命記、イザヤ書、創世記、出エジプト記、レビ記、ダニエル書、十二小預言書、民数記などである。興味深いことに、エステル記は読まれていた形跡がない。聖書以外では、『ヨベル書』、『第一エノク書』、『巨人の書』が特筆される。第二の点に関しては、E. Tovによって盛んに研究された写字生の癖が注目される。タームに基づいてクムランで作成された文書と同定された文書には、同一の筆写上の傾向が見られるのである。これによって、共同体で作成されたか否かを見分けることができる。第三の点に関しては、宗派的文書の中で肯定的に引用されている文書は、共同体の中で伝統として機能していたと考えられる。たとえば『ヨベル書』と『第一エノク書』はある主の権威を持っていたと考えられる。
『安息日の犠牲の歌』。著者は上で確認したような基準を用いて、『安息日』がクムラン共同体において伝統として機能しているのみならず、おそらくは共同体内部で作成された文書であることを示している。『安息日』は第四洞窟における7つの写本と、第十一洞窟における一つの写本、そしてマサダで発見された一つの写本が存在するが、どれもTovの方法論によれば、共同体内部で作成されたものと考えられる。またマスキールという語の使用も注目される。さらに『安息日』は、『主人の歌』や『祝福と呪い』といった共同体で作成されたと見なされる文書と語彙を共有しており、なおかつ『共同体の規則』からの引用に近い箇所も見られる。以上より、著者は『安息日』はクムラン共同体の伝統として機能しており、なおかつ共同体内部で作成された文書であると結論付ける。
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