- James C. VanderKam, "The Wicked Priest Revisited," in The "Other" in Second Temple Judaism: Essays in Honor of John J. Collins, ed. Daniel C. Harlow, Karina Martin Hogan, Matthew Goff and Joel S. Kaminsky (Grand Rapids, MI: Eerdmans, 2011), pp. 350-67.
The "Other" in Second Temple Judaism: Essays in Honor of John J. Collins (Calvin Institute of Christian Worship Liturgical Studies) Daniel C. Harlow Wm. B. Eerdmans Publishing 2011-02-08 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
第一洞窟で発見された『ハバクク書注解』において、悪の祭司という言葉は、ハバ2:5-17の注解部分に5回現れる。それらによると、悪の祭司は傲慢な人物だったという。それだけでなく、彼は民から富を奪う権力を最初は持っていたが、やがて民によって復讐された。これはつまり、悪の祭司は祭司であるだけでなく、強力な軍事的指導者でもあったことを示しており、それはすなわちハスモン朝以前の祭司では考えられないということを意味する。しかし富に目がくらむ前はよい祭司だったという描写も見られる。よい祭司であるがゆえに、神に反する暴力的な民の富を収奪したのだが、やがて民全体から富を奪うようになって悪の道に染まったのだった。
興味深いことに、悪の祭司の描写において、動詞はほぼ必ず完了形あるいはヴァヴ倒置未完了形になっている。すなわち、悪の祭司の動作はまったく預言や未来に帰されていない。一方で、悪の祭司は浄不浄の問題と密接に関わるような描写を施されている。こうした悪の祭司をあるグループが制裁したように描かれている。その制裁とは、折檻、悪の裁き、病気、肉体的な拷問を含んでいた。悪の祭司が病気に罹ったのだとすると、第一マカバイ記13:12-24によるとヨナタンはいかなる病気にも罹っていないので、悪の祭司=ヨナタン説に合致しないが、これは民が悪の祭司に対し極めて辛辣だったことを表現しているのだと考えることもできる。
著者によると、悪の祭司の描写を検証することでさまざまな可能性を挙げることはできるが、はっきりと分かっているのは、悪の祭司は、イスラエルを支配して悪に染まる以前にはよい評判を持っていたことと、民の富を収奪して復讐されたことぐらいであるという。しかし、さまざまな可能性を考慮しても、ヨナタンは依然として高い確率で悪の祭司の正体であるといえる。
当初はハスモン家に共鳴しながらも後に離れていった人々というと、やはり第一マカバイ記に登場するハシダイと呼ばれる一団が思い起こされ、ハシダイ側の視点に立てばハスモン家こそまさに「悪の祭司」そのものであったに違いないとも思われますが、だとしてそれで「義の教師」の正体にすぐ結び付くかどうかは分かりません。
返信削除想像を逞しくすれば、「教師」というからには、祭司ではなく、何らかの預言者的カリスマの持ち主だったのでしょうか???
Josephologyさん、コメントをありがとうございます。義の教師と悪の祭司の同定は難しいですね。悪の祭司に関しては、現在ではG. Vermesの説(ヨナタン説)が有力なようですが、フローニンゲン仮説のような複雑な説もあるので、なかなか難しいところです。
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