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2015年2月25日水曜日

考古学的観点から見るクムランの女性 Galor, "Gender and Qumran"

  • Katharine Galor, "Gender and Qumran," in Holistic Qumran: Trans-Disciplinary Research of Qumran and the Dead Sea Scrolls, ed. Jan Gunneweg, Annemie Adriaens and Joris Dik (Studies on the Texts of the Desert of Judah Vol. 87; Leiden: Brill, 2010), pp. 29-38.
Holistic Qumran: Trans-disciplinary Research of Qumran and the Dead Sea Scrolls (Studies on the Texts of the Desert of Judah)Holistic Qumran: Trans-disciplinary Research of Qumran and the Dead Sea Scrolls (Studies on the Texts of the Desert of Judah)
Jan Gunneweg

Brill Academic Pub 2010-02-15
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本論文は、遺跡としてのクムランからの考古学的発見をもとに、クムラン共同体における女性の存在を検証したものである。広く受け入れられている解釈では、クムランの遺跡は洞窟と文書を結びつけた、主として独身の共同体によって使われていたものだという。一方で、近年の研究によって提唱されている別の解釈では、遺跡と住人の特徴はよりひろい地域の文化や人口を映しているという。著者は、第一の解釈が長く優勢だったのは、考古学におけるジェンダー研究が立ち遅れていたからだと主張する。またクムラン研究におけるテクスト偏重の傾向もそれに拍車をかけた。

著者は、クムラン遺跡から発見された装身具、櫛(これはクムラン遺跡からではなくワディ・ムラバットから)、ヘアネット、チュニック、布地、紡錘車、そして香水や油の壺などを、他の遺跡で発見されたものと比較することで、それらが他の遺跡同様、女性によって用いられていたことを示す。ローマ人のチュニックは一枚織りであったが、ユダヤ人のチュニックは二部分に分かれており、肩のところで縫い合わせられ、首元が広く開いていた。そして特にガンマの形をした模様があるチュニックは、女性によって織られていた。香水の中でもバルサムは男性によっても使われていたことが知られているが、新約聖書やタルムードでは香水は主として女性のものとされている。

こうしたことから、クムランの遺跡は他の地域の遺跡と比べて特別に変わったことはなく、それは女性の存在に関しても同様であると著者は結論付ける。

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