- Eric D. Reymond, Qumran Hebrew: An Overview or Orthography, Phonology, and Morphology (Atlanta: Society of Biblical Literature, 2014).
Qumran Hebrew: An Overview of Orthography, Phonology, and Morphology (Society of Biblical Literature Resourses for Biblical Study) Eric D. Reymond Society of Biblical Literature 2014-02 売り上げランキング : 1095058 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
クムランで発見された写本群のヘブライ語に関しては、これまで代表的なものとして、Elisha Qimron, Hebrew of the Dead Sea Scrolls (1986)と、E.Y. Kutscher, The Language and Linguistic Background of the Complete Isaiah Scroll (1974)などが挙げられるが、本書はこれらを批判的に乗り越えようとした一冊である。ここでは、General Remarks (pp. 13-21)とConclusions (pp. 225-34)をまとめておく。
死海文書のヘブライ語は、マソラー本文に見られる標準聖書ヘブライ語、後期聖書ヘブライ語、ミシュナー・ヘブライ語、サマリア・ヘブライ語、そしてバビロニア伝統のヘブライ語などとの関係がある。むろん一方では、クムラン・ヘブライ語にしか見られないような特徴もある。
自然言語か人工言語か。研究者たちは、クムラン・ヘブライ語の特徴をさまざまに描こうとしている。Kutcher, Qimron, Shelomo Moragらによれば、クムラン・ヘブライ語は、文書の著者たちの自然言語(日常の意思疎通のために自然と発展した言語)だとされている。同様のアプローチで、Joshua Blauは、クムラン・ヘブライ語を後期聖書ヘブライ語に基づいた文学的イディオムだと説明した。一方で、Chaim Rabinをはじめ、William M. Schniedewind, Gary A. Rendsburg, James H. Charlesworthらは、クムラン・ヘブライ語は人工的かつ擬古的な言語と見なされるべきだと考えた。すなわち、彼らはクムラン・ヘブライ語は文書を書いた者たちの話し言葉ではなく、anti-languageだと見なしているのである。
話し言葉か書き言葉か。クムラン・ヘブライ語に見られる特異な正書法の中に、ある研究者たちは話し言葉と書き言葉の併存、すなわちダイグロシアを見る場合もあるが、Jacobus A. Naudeは、こうした二極化は単純すぎる説明であり、言語的なバリエーションにはさまざまな要因が影響すると反論した。
アラム語の影響か。クムラン・ヘブライ語に見られるいくつかの特徴をもとに、ある研究者たちは、文書の著者たちがアラム語の知識を持っていたこと指摘しようとする。ただし、同じことは、アラム語とヘブライ語との間でそもそも共有されている、通常の言語的発展の結果からも説明することができる。
こうした問題点を意識した上で、Joshua Blauによれば、クムラン・ヘブライ語は、人工的な聖書ヘブライ語の最終段階を反映しており、同時にアラム語やミシュナー・ヘブライ語といった話し言葉の影響にも曝されているのだという。
本書の著者は、クムラン・ヘブライ語における、自然言語の部分と人工言語の部分の併存、文書の著者の話し言葉の影響、アラム語化の傾向、擬古文的な傾向、標準聖書ヘブライ語の正書法の模倣と、それからの逸脱、写字生の正書法の異なった伝統などを認めつつも、いくつかの独自の見解を披露している。
まず、明らかに写字生の誤りと思われる箇所が多数あるので、ある一か所に独特の表現が出てきているからといって、それを基にしてクムラン・ヘブライ語の文法の特徴を一般化することは不適切であるという。
次に、1QIsaa, IQS, 4Q107などといった例外を除いて、アラム語の影響はわずかだという指摘である。むろんまったくないわけではないが、それはおそらく文書作者や写字生がバイリンガルだったことに起因するものであり、死海文書全体に普及しているわけではない。
そして、マソラー本文との親和性である。著者によれば、クムラン・ヘブライ語は、後期聖書ヘブライ語やマソラー本文のヘブライ語と共通の遺産を引き継いでおり、頻繁に見られる類似した特徴からは、クムラン・ヘブライ語とマソラー本文のそれとの通時的な発展が予想される。
死海文書のヘブライ語は、マソラー本文に見られる標準聖書ヘブライ語、後期聖書ヘブライ語、ミシュナー・ヘブライ語、サマリア・ヘブライ語、そしてバビロニア伝統のヘブライ語などとの関係がある。むろん一方では、クムラン・ヘブライ語にしか見られないような特徴もある。
自然言語か人工言語か。研究者たちは、クムラン・ヘブライ語の特徴をさまざまに描こうとしている。Kutcher, Qimron, Shelomo Moragらによれば、クムラン・ヘブライ語は、文書の著者たちの自然言語(日常の意思疎通のために自然と発展した言語)だとされている。同様のアプローチで、Joshua Blauは、クムラン・ヘブライ語を後期聖書ヘブライ語に基づいた文学的イディオムだと説明した。一方で、Chaim Rabinをはじめ、William M. Schniedewind, Gary A. Rendsburg, James H. Charlesworthらは、クムラン・ヘブライ語は人工的かつ擬古的な言語と見なされるべきだと考えた。すなわち、彼らはクムラン・ヘブライ語は文書を書いた者たちの話し言葉ではなく、anti-languageだと見なしているのである。
話し言葉か書き言葉か。クムラン・ヘブライ語に見られる特異な正書法の中に、ある研究者たちは話し言葉と書き言葉の併存、すなわちダイグロシアを見る場合もあるが、Jacobus A. Naudeは、こうした二極化は単純すぎる説明であり、言語的なバリエーションにはさまざまな要因が影響すると反論した。
アラム語の影響か。クムラン・ヘブライ語に見られるいくつかの特徴をもとに、ある研究者たちは、文書の著者たちがアラム語の知識を持っていたこと指摘しようとする。ただし、同じことは、アラム語とヘブライ語との間でそもそも共有されている、通常の言語的発展の結果からも説明することができる。
こうした問題点を意識した上で、Joshua Blauによれば、クムラン・ヘブライ語は、人工的な聖書ヘブライ語の最終段階を反映しており、同時にアラム語やミシュナー・ヘブライ語といった話し言葉の影響にも曝されているのだという。
本書の著者は、クムラン・ヘブライ語における、自然言語の部分と人工言語の部分の併存、文書の著者の話し言葉の影響、アラム語化の傾向、擬古文的な傾向、標準聖書ヘブライ語の正書法の模倣と、それからの逸脱、写字生の正書法の異なった伝統などを認めつつも、いくつかの独自の見解を披露している。
まず、明らかに写字生の誤りと思われる箇所が多数あるので、ある一か所に独特の表現が出てきているからといって、それを基にしてクムラン・ヘブライ語の文法の特徴を一般化することは不適切であるという。
次に、1QIsaa, IQS, 4Q107などといった例外を除いて、アラム語の影響はわずかだという指摘である。むろんまったくないわけではないが、それはおそらく文書作者や写字生がバイリンガルだったことに起因するものであり、死海文書全体に普及しているわけではない。
そして、マソラー本文との親和性である。著者によれば、クムラン・ヘブライ語は、後期聖書ヘブライ語やマソラー本文のヘブライ語と共通の遺産を引き継いでおり、頻繁に見られる類似した特徴からは、クムラン・ヘブライ語とマソラー本文のそれとの通時的な発展が予想される。
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