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2019年6月26日水曜日

ヒエロニュムスとタルグム Hayward, "Saint Jerome and the Aramaic Targumim"

  • Robert Hayward, "Saint Jerome and the Aramaic Targumim," Journal of Semitic Studies 32/1 (1987): 105-23.

近年のタルグム研究は、ある伝承の古さや新約聖書への影響に関心を持つことが多く(特に、R. le Deaut, M. McNamara, L. Diez Merinoらカトリックの研究者)、タルグムと教父の著作の関係はあまり話題に上がらない。本論文は、小預言書、とりわけゼカリヤ書、マラキ書、ナホム書のタルグムに残されているユダヤ伝承をヒエロニュムスがどのように用いたかを明らかにするものである。小預言書のタルグムが作られたのは、ヒエロニュムスが生きた4世紀から5世紀頃のことである。ちょうどパレスチナ・タルムードの成立時期でもある。

ヒエロニュムスがタルグムに由来する伝承を保存しているといえるのは、それが次のような伝承と同じでないことが明らかなときである。すなわち、七十人訳、聖書の諸訳、ラビ文学以前のユダヤ文学、ヒエロニュムスより古いラビ文学、オリゲネスらキリスト教文書である。ヒエロニュムスは、こうした前提のもとで、ヒエロニュムスの解釈のソースがタルグム伝承に由来することを裏付ける9つの例を挙げている。

そこから明らかなのは、ヒエロニュムスの時代は反ユダヤ的な法律が次々に施行された時代であったにもかかわらず、この教父がユダヤ人との付き合いを妨げなかったことである。またヒエロニュムスは、タルグムやラビ伝承が現存する写本よりももっと前の時代にどのように発展したのかを見せてくれる。ヒエロニュムスはユダヤ教の内部の人間ではないので、4世紀から5世紀にかけての非聖書的な伝承の状態を述べ伝えるのに最適の人物である。ヒエロニュムスにとっても、一節ごとになっているタルグムは、ハラハーやアガダーのポイントに沿って再編成されているミドラッシュやタルムードよりも便利だったに違いない。またハラハー的な議論についてはあまり知識を持っていないヒエロニュムスは、一般向けの聖書解釈を扱うタルグムの方が使いやすかった。

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