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2014年1月19日日曜日

書簡とは何か? Trapp, "What is a Letter?"

  • Michael Trapp, "What is a Letter?" in Greek and Latin Letters: An Anthology, with Translation, ed. M. Trapp (Cambridge: Cambridge University Press, 2003), pp. 1-5.
Greek and Latin Letters: An Anthology with Translation (Cambridge Greek and Latin Classics)Greek and Latin Letters: An Anthology with Translation (Cambridge Greek and Latin Classics)
Michael Trapp

Cambridge University Press 2002-06-01
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ギリシア・ラテン文学の書簡アンソロジーのイントロを読みました。著者のTrappは、書簡をゆるやかに定義する説明として、以下の6点を挙げています。すなわち書簡とは:
  1. ある人から別の人(あるいは人々)へと書かれたメッセージ。
  2. 何らかの触ることのできる媒体に書きとめられたもの。
  3. 送り主から受取人へと物理的に送られるもの。
  4. 送り主と受取人の取引を明記するような、定型の挨拶文が冒頭と結びにあるもの。
  5. 送り主と受取人とが互いに離れたところにいて、直接会うことができないときのためのもの。
  6. ある程度の長さでまとまっているもの。
また書簡の種類としては、(1)パピルス、木、鉛などに書かれたオリジナルが実際に残っているもの、(2)オリジナルは失われたが、石などに碑文として残されて、広い読者に読まれ得るもの、(3)オリジナルは失われたが、より広い読者層のために写本で伝承され、書物のかたちを取っているもの(古代末期から中世およびルネサンスに至るまで)、があるとしてます。さらに、書簡の持っている特徴を、その真正性と虚構性を軸に、以下の5種類に分けています:
  1. 歴史的な個人によって、誰かに送るために書かれたが、その後、編纂された集成のかたちでは出されなかったもの。
  2. 歴史的な個人によって、誰かに送るために書かれたが、その後、より広い読者層のために編纂された集成として出版され、なおかつ何らかの改善も施されたもの(例:キケロー、ヨハネの手紙のヨハネ、プリーニウス、フロントー、ユリアノス、リバニウス、バシレイオス、グレゴリオス、ヒエロニュムス、アウグスティヌスなど)。
  3. 歴史的な個人によって、誰か別の歴史的な個人へと書かれた書簡だが、実際にはその個人あてのものとしては送付されず、むしろ最初からより広い読者層に読まれることを想定して書かれたもの(例:セネカ、ホラーティウス、オウィディウス、さらにはマールティアーリスやユリオス・ポリュデウケスなど)。
  4. あたかも歴史的な個人によって、誰か別の歴史的な個人へと書かれたように見せかけて、実は偽作者によって、広い読者層に読まれることを想定して書かれたもの(「偽典」、例:キオーン、アイスキネース、ディオゲネース、クラテース、ファラリスなど)。
  5. 創案された人物によって、創案された人物へと書かれたもの。そこでの人物たちは、著者自身によって創案される場合と、先行する文学から取られる場合とがある(プラウトゥス、ペトローニウス、ゲメッルス、アルキフローン、フィロストラトスなど)。
Trappは、確かにさまざまな書簡を、虚構性の度合い(degree of fictionalizing)をもとに分けることは可能だが、あまりそれを推し進めすぎてもいけないと述べています。なぜなら、実際にはいかなる書簡もその両方の性質を兼ね備えているからです。歴史的な出来事を主題としたものでも、その内容は著者によって、意識的・無意識的かを問わず、何らかの選定をされていますし(personalized version of the reality)、さらには著者が誰に対して書いているかによって、著者が想定している読者からの印象も変わってくるからです(persona)。いずれにせよ、書簡とは、書き物のうちでも、かなり多様な性質を持っているといえます。

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