2017年2月18日土曜日

死海文書とラビ文学との比較研究 Fraade, Legal Fictions

  • Steven D. Fraade, Legal Fictions: Studies of Law and Narrative in the Discursive Worlds of Ancient Jewish Sectarians and Sages (JSJSup 147; Leiden: Brill, 2011).
Legal Fictions: Studies of Law and Narrative in the Discursive Worlds of Ancient Jewish Sectarians and Sages (Supplements to the Journal for the Study of Judaism)Legal Fictions: Studies of Law and Narrative in the Discursive Worlds of Ancient Jewish Sectarians and Sages (Supplements to the Journal for the Study of Judaism)
Steven D. Fraade

Brill Academic Pub 2011-05-30
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本書は、法的ミドラッシュやクムランのセクト的共同体から見た、初期ラビ運動の法的文化を明らかにした論文集である。著者は、聖書の法的箇所と、それらが埋め込まれた物語箇所とをくっきり分けることができるという通説に対して批判的であり、むしろユダヤ教は、律法と物語とを語り直すこと(renarration)で、共同体を形成したり現在進行形の律法の法的力を構成したりしてきたと考えている。そのために、著者は細部の特徴(particularities)に注目しながらテクストをベースに検証を進めている。

かつては死海文書やラビ文学の研究といえば、その背後に旧約聖書や新約聖書を想定する比較研究が盛んだったが、著者に代表されるように、近年では法的伝統や実践に関して、広義のユダヤ文学――フィロン、ヨセフス、『ヨベル書』、死海文書、タナイームのミドラッシュ――を均等に比較し、特定の聖書箇所、トピック、概念、そして法規が時代ごとにどのように解釈されてきたかを大きなスパンで考えるようになってきている。

それらの中でもとりわけ著者が注目しているのが、クムラン共同体と初期のラビ共同体との比較研究である。しかしながら、時間的に2世紀ほども離れた二つの文書コーパスを単純に比較することは、方法論的に問題がある。そこで著者は、両者が直接的な影響関係にあるかどうかを証明することは一旦棚上げし、むしろ特定のテクストを両共同体から選定した上で、特定の問題に関して両者が構造的に似ている点を差出し出そうとした。

たとえば、著者はそれぞれ独立した文書である『ダマスコ文書』と『スィフレ』とを比較し、両者が皮膚の病気の診断に関して、エルサレムの祭司たちから、聖書解釈に基づく権威を持った非祭司的エクスパートへと、決定権を委ねる相手を変えた点を指摘している。著者は慎重にも、この類似を単なる直線的な伝統の継承とは捉えず、二つの別々の共同体が、第二神殿時代および神殿崩壊後の時代に特有の同様の問題に直面して出した結論と見なしている。

著者のラビ文学を扱うときの特徴は三つある。第一に、タナイーム期のラビ文学を後代の文学と明確に区別した上で、それらを通時的な観点から読むことをしない。第二に、テクストの本文批評のみならず、その遂行的、修辞的、教育的な機能にも関心を払う。そして第三に、タナイーム期のテクストを地理的あるいは時間的に近いテクストと比較する。

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