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2018年10月18日木曜日

4Q252上の聖書引用 Brooke, "Some Remarks on 4Q252 and the Text of Genesis"

  • George J. Brooke, "Some Remarks on 4Q252 and the Text of Genesis," Textus 19 (1998): 1-25.
クムランで発見された聖書写本は、マソラー本文が古代の聖書テクストのひとつの形式にすぎないことを教えてくれた。第二神殿時代の聖書テクストの形式の多様性を示す際に、E. Tovはwitnessという語を用い、E. Ulrichはeditionという語を用いたが、本論文の著者は、J.R. Davilaに倣い、text-typeという語を用いている。これは、客観的に同定されうるソースの最大のグループを指している。そして、第二神殿時代のパレスチナにはいくつもtext-typeがあり、その代表例がサムエル記、エレミヤ書、ダニエル書である。

創世記はというと、第四洞窟の写本が出版される前までは、そうした多元性はあまり意識されてこなかった。サマリア人五書の創世記テクストも、個別のテクストというよりは、改訂版というほどのものと考えられてきた。いわば、似たり寄ったりのものという見解が多数を占めていたのである。しかしながら、第四洞窟のテクストを考慮に入れると、創世記には2つの種類のテクスト・タイプがあることが分かった。第一に、七十人訳に代表されるテクスト、そして第二に、マソラー本文、サマリア人五書、4QGen(a)、4QGen(b)、4QGen(j)、4QGen(f)に代表されるテクストである。論文著者は、4Q252がどちらのグループに属すのか、また単なる写字生の誤りに見えるような箇所にいかに釈義上のパラフレーズが隠れているのかを示そうとしている。

論文著者は、4Q252に出てくる聖書引用と思われる24箇所を分析した結果、引用は次のような4つのカテゴリーに分けられると結論付けた。第一に、4Q252がMTともLXXとも一致しない場合、第二に、4Q252とLXXが一致し、MTが一致しない場合、第三に、4Q252とMTが一致し、LXXが一致しない場合、そして第四に、4Q252のみが独立し、MTとLXXが一致する場合である。

ここから分かることは、4Q252の聖書テクストはLXXのテクスト・タイプを反映しているが、MTとは異なるということである。また4Q252の聖書テクストは釈義的なものも多く、テクストの伝達の歴史はテクストの解釈の歴史と切り離せないといえる。