2017年2月20日月曜日

死海文書研究の方法論 Brooke, Reading the Dead Sea Scrolls

  • George Brooke, Reading the Dead Sea Scrolls: Essays in Method (Early Judaism and Its Literature 39; Atlanta: Society of Biblical Literature, 2013).
Reading the Dead Sea Scrolls: Essays in Method (Early Judaism and Its Literature)Reading the Dead Sea Scrolls: Essays in Method (Early Judaism and Its Literature)
George J Brooke Nathalie LaCoste

Society of Biblical Literature 2013-09-13
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本書は、死海文書研究の方法論を議論した論考を収めた論文集である。著者は、クムラン学者の第一世代は死海文書研究の方法論に対する意識が低く、かろうじて彼らが受けてきた聖書学の方法論を適用したにすぎないと批判する。聖書学は文学研究の方法論に関しては創造的であったが、死海文書研究には独自の方法論はなかった。とはいえ、初期の死海文書研究においては、テクストの解読や校訂といった基礎的な文献学的作業をする必要があったので、そこまで手が回らなかったともいえる。

著者のBrooke自身は死海文書研究の第二世代に属する研究者であり、聖書学の古典的な方法論を再考しつつ、空間性の研究や心理学などの最先端のアプローチを採用しようとした。そこで、本書の中では、いかにして死海文書は聖書学のタスクを再構成したのか、そしていかにして人文学や社会学が死海文書研究を再構成するのかを考察している。

具体的には、死海文書の写本を検証することにより、受動的な役割しか持たないと考えられていた写字生には、実は創造的で解釈学的な役割があったことを明らかにした。また頻繁に用いられる「伝統」という概念について、最高を促している。というのも、クムラン共同体があった時代には、それまで伝統と考えられてきたさまざまな概念が使われなくなっているからである。これは、著者がしばしば言及する「記憶」の研究にもつながるものである。さらに、Jutta JokirankaやEyal Regevらと共に、著者は死海文書の理解に社会科学的な方法論が適用できることを主張している。

著者によれば、聖書学や死海文書研究は、専門用語の問題に取り囲まれている。たとえば、hypertextとhypotextという言葉が、文書間の模倣や依拠を表わすために使われている。著者はhypertextとは模倣的・依拠的テクスト(imitative/dependent text)のこと、hypotextとはhypertextが依拠しているテクストのこと、そしてparatextとはテクストを読者に「取り次ぐ」テクスト的現象のことだと定義している。著者は、このように死海文書の間テクスト性について深い洞察をしている。

著者は死海文書のうちの歴史的テクストと呼ばれるものを検証することで、クムラン共同体がサムエル記および列王記や歴代誌などといった、聖書の歴史文書にほとんど関心を持たなかったことを明らかにした。

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