2017年2月15日水曜日

パレスチナのユダヤ人とヘレニズム Lieberman, Hellenism in Jewish Palestine

  • Saul Lieberman, Hellenism in Jewish Palestine: Studies in Literary Transmission, Beliefs and Manners of Palestine in the I Century B.C.E.-IV Century C.E. (Texts and Studies of the Jewish Theological Seminary of America 18; New York: Jewish Theological Seminary of America, 1950).
Greek in Jewish Palestine/Hellenism in Jewish PalestineGreek in Jewish Palestine/Hellenism in Jewish Palestine
Saul Lieberman Dov Zlotnick

JTS Press 1994-01-01
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本書は、ラビたちがいかに異教のギリシア語世界の用語や慣習に通じていたかを検証した古典的名著である。著者は、ユダヤ人と異教徒との間で、聖典解釈の方法論、祭儀のパターン、神殿の構造、習慣、そして自然科学などに関して多大なる類似性が認められると主張する。そしてその類似性は、ヘレニズム期の地中海世界におけるさまざまな民族間の直接的な関係性の結果であると考えられる。

ペルシア時代および初期ギリシア時代の律法学者たち(ソフェリーム)は、アレクサンドリアの文献学者たちのように写本を比較して聖書の規範テクストを作成した。聖典を扱っていることから、律法学者たちの校訂の方がより保守的なものではあったが、彼らが校訂において用いた用語の多くはアレクサンドリア文献学からの多大な影響があった(ヌンとアンティシグマ、ミドラッシュとエクセーゲーシス、タルグムとヘルメーネイア等)。律法学者たちの聖書解釈の方法論自体は独自のものであったが、それを表わす用語はアレクサンドリア文献学から取られていたのである。

ラビたちはギリシア思想を子供たちが学ぶことを禁じはしたが、律法を修めた者であれば異教哲学を学ぶことも可能であり、楽しみのためにホメロスを読むことすら認められていた。というのも、ラビたちにとって、偶像崇拝のような異教徒の習慣との闘いは過去のものであって、キリスト者たちの懸念ほどには切実なものではなかったからである。

著者の検証はかなり文献学的な側面に偏っており、ユダヤ思想に対するギリシア思想からの哲学的な影響についてはあまり論証していない。また『アエネーイス』などに見られるユダヤ思想からギリシア思想への影響にも注目すべきである。とはいえ、そのままでは難解かつ曖昧なラビ文学のテクストが、ギリシア的背景を参照することで明らかになることを指摘した本書の貢献は大きい。

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