2017年2月25日土曜日

死海文書の社会科学的分析 Jokiranta, Social Identity and Sectarianism

  • Jutta Jokiranta, Social Identity and Sectarianism in the Qumran Movement (STDJ 105; Leiden: Brill, 2013).
本書は死海文書に社会科学的理論(social-scientific theory)を当てはめることを試みた著者の博士論文を基にした一作である。その目的はもちろんテクストを理解することである。著者は、Bryan Wilsonのやり方で宗教性の種類によってセクトを分けたり、Ernst Troeltschのやり方で教会とセクトとを対比したりするのではなく、Rodney StarkとWilliam Sims Bainbridgeは、セクトのようなグループと社会との間にある緊張の度合いを議論している。

StarkとBainbridgeはセクトを、「伝統的な信仰や実践から逸脱した宗教組織」と定義しているが、そのセクトと社会との緊張は、「相違(difference)」、「敵意(antagonism)」、そして「分離(separation)」から測ることができるという。ここでの「相違」とは、ある宗教グループの規範が周囲の社会の規範から逸脱していることを指し、「敵意」とは、独特の正当性を主張することと関係しており、そして「分離」とは、社会文化的環境を拒絶する最も確固としたしるしである。

さらに、さらなる方法論として、著者はHenri Tajfelによる「社会的アイデンティティ理論(social identity theory)」を用いている。これは、ある個人の自己概念がその人の属する社会グループの一員であることの意識に由来することを指している。また、あるグループに属しているという意識は、傾向として、グループ同士の類似性や相違性を増幅して示すことがあるという。この理論を用いることで、著者は、アイデンティティの成立は真に社会心理学的な現象だということを知ることができると考えている。

こうした方法論をもとに死海文書を検証した結果、著者は、『ダマスコ文書』が一般的に世間に開かれた文書であるとされているのに対し、実際には『ダマスコ文書』も『共同体の規則』も共に広く共有されたセクト主義的性格を持っていると指摘している。またクムラン共同体の聖書解釈であるペシャリームは、「相違」「敵意」「分離」を示すセクト主義の産物と言えるという。というのも、ペシャリームにおいて、内部グループはさまざまな集合的な用語で表わされており、一方で外部グループはステレオタイプで表わされているからである。

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