2015年2月6日金曜日

ギリシア語パピルスの手紙 Luiselli, "Greek Letters on Papyrus"

  • Raffaele Luiselli, "Greek Letters on Papyrus: First to Eighth Centuries: A Survey," Asiatische Studien/Études Asiatiques 3 (2008): 677-737.
本論文は、後一世紀から八世紀にかけて、主としてギリシア語で書かれた手紙について、書く道具、字体、前書き、本文、末尾、宛名書き、封印の仕方、保存方法、バイリンガリズム、定型文などの観点から概観したものである。

書簡は、コミュニケーションの道具であると同時に、哲学や文学のフォーマットとしても用いられていた。著者は手紙の種類を三つに分けている。
  1. documentary: 古代に住んでいたごく普通の個人によって書かれた手紙。しばしばパピルスなど壊れやすいものに書かれている。
  2. literary: 歴史上の人物によって書かれ、のちに広い読者層のためにコレクションされたもの。しばしば羊皮紙や紙のコーデックスに書かれている。
  3. fictitious: 架空の人物によって書かれた手紙。物語の中などに挿入されている場合もある。知的に洗練された著者によって書かれることが多い。
本論文で扱われているのは、このうちの一つ目のdocumentaryな手紙である。こうした手紙は、パピルス、陶器、羊皮紙、木の皮などに書かれた。パピルスの場合、20シートの巻物を小分けにして使った。ローマ時代になると特に、シートを縦長にして使うことが多かったが、さらに時代が下がると横長にする場合もあった。基本的には、別の要件には新しいパピルスを使うことが原則だったが、裏紙として再利用することも多々あった。人々はパピルスのリサイクルをあまり気にしなかったようである。文学テクストに比べ、手紙では語の間にスペースを取ることが多かった。アクセント記号や気息記号、さらに行下げなども用いられた。

手紙は口頭で述べられたことをプロが書き留めることもあれば、本人が書くこともあった。公的な手紙の場合、スタイルや草書体の度合いなどは、TPOに応じて自ずと決まっていった。これに対し、個人の手紙は読みやすさが重視された。

前書きでは、送り主の名前と宛名が示される。その方法は4種類ほどにまとめられるが、組み合わされる場合も多かった。アラブ時代のエジプトの手紙では、ギリシア語で書かれていても、ヘブライ語的な挨拶やアラビア語のバスマラのような書き方が見られる。「万能の主の名において」という書き出しは、ユダヤからキリスト教を通じ、イスラーム期でも用いられるようになった。本文では多種多様なことが語られたので、ここでは割愛。末尾の挨拶は5種類の書き方があったが、これも組み合わされることが多かった。仕事の手紙では省略されることもあった。

新しいパピルスに手紙を書く場合は、相手の住所は、パピルスを巻いた外側に書いたが、裏紙の再利用の場合は、さまざまに工夫して住所を書いた。巻き方としては二種類あり、横に巻く場合、開いて読みやすいように左側の縁が上になるように巻いた。縦に巻く場合、上側の縁が上になるように巻いた。保存するときは、公的な手紙は、来た手紙と送った手紙とをくっつけて長い巻物にして保存した。個人の場合はさまざまだが、壺などに丸めて入れることが多かった。

多くのエジプト人は、エジプト語が母語であってもギリシア語で手紙を書くことが多かった。ローマ時代にはラテン語で書くこともあったが、依然としてギリシア語は共通言語として用いられていた。しかし、書き手の言語習得のレベルによって、母語からのさまざまな影響が見られる。とはいっても、十分にギリシア語で書ける人物が、本文はギリシア語で書いて前書きや住所をラテン語で書く場合や、本文はコプト語で書いてその他はギリシア語で書く場合などもあり、どのような基準で言語を変えているのか不明な場合も多々ある。ラテン文字で書かれたギリシア語の手紙やその逆も見つかっている。

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