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2015年2月19日木曜日

北フランスにおけるユダヤの聖書解釈 Grossman, "The School of Literal Jewish Exegesis in Northern France"

  • Avraham Grossman, "The School of Literal Jewish Exegesis in Northern France," in Hebrew Bible/Old Testament: The History of Its Interpretation, Vol. 1, Part 2, ed. Magne Sæbø (Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht, 2000), pp. 321-71, esp. 321-31.
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本論文は、11から12世紀の北フランスで興隆した、字義的な聖書解釈(プシャット)の伝統を概観するものである。扱われているのは、メナヘム・ベン・ヘルボ(1015-1085)、ラッシー(1040-1105)、ヨセフ・カラ(1050-1130)、シェマイア(1060-1130)、ラシュバム(1080-1160)、ボージェンシーのエリエゼル(12世紀)、ヨセフ・ベン・イツハク・ベホル・ショル(12世紀)らである。彼らは聖書解釈の方法論として、プシャット(平明な意味)とデラッシュ(説教的解釈)とを区別したのである。では、いったいなぜこのような字義的解釈の学派が11世紀のフランスに突然現れたのだろうか。著者は以下の3つの理由を挙げている。
  1. スペインのユダヤ教文化の影響。
  2. 12世紀の文化的ルネサンスの影響。
  3. 同時代のキリスト教聖書解釈の影響。
スペインのユダヤ教文化の影響。ラッシーをはじめとする北フランスの聖書解釈者たちは、メナヘム・ベン・サルークやドゥナシュ・ベン・ラブラットといったスペインのヘブライ語文法学者たちの影響を強く受けている。また聖書解釈については、スペインで作成された正確な聖書の写本に多くを負っている。北フランスの聖書解釈者たちは、他のどの地域のユダヤ人よりもスペインの伝統に対して開けていたために、それを取り入れて発展させ、新しい形式をもった創造的な聖書解釈へと進むことができたのだといえる。

12世紀ルネサンスの影響。いわゆる12世紀ルネサンスは信仰と理性の葛藤、聖書的権威と解釈の問題などさまざまな新しいアイデアが導入された時代である。文学的活動においては、文法への関心、聖書の(部分的な)批判精神、聖書の字義通りの解釈、正しいテクストの要求などが挙げられる。いうなれば、12世紀ルネサンスは人間理性への新しい自信の世紀であった。キリスト教神学者へのユダヤ教聖書解釈の影響もあり、サン・ヴィクトールのヒュー、リシャール、アンドリュー、シャンポーのウィリアムなどがユダヤ教聖書解釈を参照していたという。

同時代のキリスト教聖書解釈の影響。9世紀以降、ヨーロッパにおいてしばしばユダヤ教徒とキリスト教徒(リヨンのアゴバルドやアムロら)との間に聖書に関する論争が起きた。ユダヤ教側の懸念は、伝統的なラビ的聖書解釈である説教的解釈のデラッシュが、キリスト教側のプロパガンダに利用されてしまうのではないかということであった。一方で、プシャットを主張しすぎると、今度はキリスト教側から聖書の寓意的意味を見落としていると批判されるおそれもあった。多くのユダヤ教聖書解釈者たちは、注解の中にキリスト教徒との論争をそれと分からぬように紛れ込ませている。

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