- Charlotte Hempel, "Sources and Redaction in the Dead Sea Scrolls: The Growth of Ancient Texts," in Rediscovering the Dead Sea Scrolls: An Assessment of Old and New Approaches and Methods, ed. Mexine L. Grossmann (Grand Rapids, MI: Eerdmans, 2010), pp. 162-81.
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写字生による欄外のしるし。C.A. KorpelやJ.M. Oeschらはdelimitation criticismと呼ぶ方法で、『共同体の規則』の研究に取り組んでいる。それによると、1QS写本の欄外に古ヘブライ文字が書かれているところには、何らかの意味が認められる。たとえば、1QS 5:1にヴァヴが書かれていることは、同箇所がテクストにおける重要な起点であることを示していると考えられる。なぜならば、4QSdは1QS 5:1に当たる部分から始まっているからである。また、パラグラフォス・サインと名づけられたしるしがあるところは、E. Tovによると、後代の写字生や読者によって挿入された部分であるという。こうしたことをTovはparatextual elementsと呼んでいる。これらのしるしは、その箇所からテクストが発展したことを示しているのである。
写字生による修正。1QS 7-8は、AとBの二人の写字生によって書かれたものであると考えられており、Aが作成したものを修正したBは、その修正に際してAが用いたものとは異なった写本を用いたと考えられる。そしてその異なった写本とは、完全にではないにせよ第四洞窟で発見された写本と同じものと考えられるという。また1QS 8-9に見られる「それらがイスラエルにあったとき」という表現とそれより少し長い表現とを比べると、前者の方がより古いと考えられるので、それは1QSの写字生Aの担当部分と考えられる。同様の表現が4QSdと4QSeにも見られる。
同作品の複数の写本における相違点と類似点。『共同体の規則』の1QS写本と諸4QS写本における違いは、以下の4点である。
- 1QSa(『会衆の規則』)と1QSb(『祝福の規則』)といった『共同体の規則』の補遺部分は、第四洞窟から発見された写本には見られない。
- 4QSbは第四洞窟写本の中で、唯一1QS写本のすべての資料(1QS 1-4を含む)をカバーしている。
- 4QSdは1QS 1-4を含んでおらず、1QS 5に当たる箇所から始まっている。
- 4QSeは1QS 8:15-9:11に当たる部分を含んでいない。
こうしたことから、1QSより短い4QSdはより古い『共同体の規則』を保存していると考えることができる(写本の年代自体は1QSの方が4QSdよりも古いので、新しく1QSが作成されたあとも、古い版が書写され続けていた)。ただしP. Alexanderはまったく逆に、古いほうが長く、新しい方では短くなったと主張している。4QSeの欠落も、より新しい4QSeはより古い1QS 8:15-9:11を欠いているとも考えられるし、Metsoのように、より新しい1QS 8:15-9:11はより古い4QSeを拡張したものだと考えることもできる。つまり考え方次第で解釈は変わるということだが、著者は共有している部分が古い箇所であって、欠落にせよ拡張にせよ、共有していない部分が新しいと考える。
違う作品同士の共有部分。『共同体の規則』(1QS)、『ダマスコ文書』(4QDa)、『諸規則』(4Q265)における共有部分はより古い箇所と考えられる。つまり、さまざまなテクスト伝承が集まってできたヘブライ語聖書のように、クムランでもそれぞれ別の伝承が集まっていったのだといえる。
写本上の根拠のなさ。Jerome Murphy-O'ConnorとJean Pouillyは、第四洞窟の校訂版が出揃う以前から、『共同体の規則』(1QS)は以下の過程を通って現在の姿になったと推測していた。
- 1QS 8:1-10a, 12b-16a, and 9:3-10:8a
- 1QS 8:10b-12a; 8:16b-9:2
- 1QS 5:1-13a and 6:8-7:25
- 1QS 1:1-4:26; 5:13b-6:8a; 10:9-11:22
すなわち、1QS 8-9を初期の核として、そのあとから1QS 1-4と1QS 10-11とが集められていったということである。この考え方は、のちに第四洞窟からの成果が明らかになったあとにも、ほぼそのまま通用している。
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