2015年2月11日水曜日

『共同体の規則』における刑法 Hempel, "The Penal Code Reconsidered"

  • Charlotte Hempel, "The Penal Code Reconsidered," in Legal Texts and Legal Issues, ed. Moshe Bernstein, Florentino Garcia Martinez and John Kampen (Leiden: Brill, 1997), pp. 337-48.
Legal Texts and Legal Issues: Proceedings of the Second Meeting of the International Organization for Qumran Studies Cambridge 1995, Published in Honour of Joseph M. Baumgarten (Studies of the Texts of Thedesert of Judah)Legal Texts and Legal Issues: Proceedings of the Second Meeting of the International Organization for Qumran Studies Cambridge 1995, Published in Honour of Joseph M. Baumgarten (Studies of the Texts of Thedesert of Judah)
International Organization for Qumran Studies Meeting 1995 Cambridge

Brill Academic Pub 1997-08-01
売り上げランキング : 2213840

Amazonで詳しく見る by G-Tools
本論文は、『共同体の規則』(1QS、以下『共同体』)の第6-7欄に含まれる刑法について、『ダマスコ文書』の死海写本(以下D写本)4QDa, 4QDb, 4QDeなどとの比較を通して、その発展の経緯を検証したものである。『共同体』の罰則に関しては、Joseph Baumgartenが検証を試みたが、本論文の著者はむしろ、刑法(penal code)への違反がどのように理解されているかという点に注目している。

まず『共同体』とD写本が共有している刑法の違反を比較すると、両者がまず間違いなく直接の影響関係にあったことが分かる。ただし、両者が共有している刑法は、『共同体』に収録されたあと、『共同体』の発展の中で改定されていったものと思われる。それが特に分かるのは、自分たちの共同体の呼称に関して、『共同体』はラビームという名を好むのに対し、『ダマスコ文書』はラビームという言葉はいくつかある呼称のうちのひとつにすぎず、むしろエダーをよく用いる。ただし4QDaには『共同体』同様にラビームという言葉がある。著者はこのことについて、もともと『共同体』と『ダマスコ文書』が共有していた刑法にラビームという言葉があり、それがたまたま『共同体』のみに残ったというよりは、むしろ4QDaに出てくるラビームは後代の付加と考えるべきと主張している。

クムラン共同体が持っていたであろう初期の違反は、『共同体』にはないが、D写本すなわち4QDb,eのみが保存する違反から見て取ることができる。『共同体』とD写本とが共有している違反だけに注目してしまうと、刑法を『共同体』のみと関連付けてしまうことになる。しかし、D写本のみに収録された違反の存在は、『共同体』や『ダマスコ写本』よりも以前のバージョンがあったことを教えてくれる。D写本および『ダマスコ文書』に女性や子供への言及があるにもかかわらず、『共同体』にはないことは、『共同体』を奉じた共同体が意図的にこうした言及を省いたのだと考えられる。

以上より、著者は5点の結論を導く。第一に、刑法のジャンルは『共同体』の前身となる運動に端を発する。第二に、この前身となる運動の刑法の名残りは、D写本に残されている。第三に、『共同体』を作成した共同体は、このジャンルを採用し、自分たちの刑法を作った。第四に、この共同体はD写本の刑法を改定した。第五に、この共同体による採用・改定のあと、『共同体』はさらに独自に発展していった(=もとのD写本から離れていった。例:呼称がエダーからラビームへと代わっていった)。

0 件のコメント:

コメントを投稿