2015年3月6日金曜日

『律法儀礼遵守論』の立ち位置 Schiffman, "The Place of 4QMMT in the Corpus of Qumran Manuscripts"

  • Lawrence H. Schiffman, "The Place of 4QMMT in the Corpus of Qumran Manuscripts," in Reading 4QMMT: New Perspectives on Qumran Law and History, ed. John Kampen and Moshe J. Bernstein (SBL Symposium Series, No.2; Atlanta, GA: Scholars Press, 1996), pp. 81-98.
本論文は、『律法儀礼遵守論』(以下、『律法』)の三部構成に従って、それぞれが他の死海文書と比べてどのような特徴があるかを比較したものである。同書は、第一部が暦、第二部が律法リスト、そして第三部が説教的結論から構成されている。

第一部の中では、一年を364日とする暦法が用いられている。これは死海文書の中では、ミシュマロットと呼ばれる一群、『神殿巻物』、『ヨベル書』、そして『エノク書』などにも見られるものである。第二部と第三部が似たような言い回しで始まっていることから、一つのユニットと見なされているのに対し、この第一部はあとから写字生が写してきたセクト主義的暦を冒頭に付加したものと考えられる。それは、第二部と第三部において第一部の内容がまったく言及されていないことからも分かる。特に『神殿巻物』との共通性が高く、両者はユダヤ法におけるサドカイ派の特徴を備えている。

第二部に関しては、『律法』と、『神殿巻物』、『ダマスコ文書』、そして『詞華集(Florilegium)』(4Q174)とを比較つつ、共通点を挙げている。まず『律法』と『神殿巻物』とは、犠牲の捧げ方や食べ方、また捧げるときに体が浄化されていなければならないこと、神殿の外で殺した動物を聖域に持って入ることの禁止、そして妊娠した動物を殺すことの禁止などに関して明らかにアイデアを共有している。しかもそれは、後代のラビ文学におけるサドカイ派の見解であり、明確に反パリサイ派的あるいは反ラビ的である。ただし、『神殿巻物』が神殿の中庭を聖性に従って三分類したときに「庭」という語を使うのに対し、『律法』とタナイーム資料は「野営地」という言葉を用いている。すなわち、『律法』は『神殿巻物』と相当の共通点として反パリサイ派的な特徴を持っているが、ときに両者は異なった観点も持っているということである。

『律法』と『ダマスコ文書』ともかなり似ている。女性の月経でない血を浄化すること、植栽の方法、目が見えない人や耳が聞こえない人を共同体に入れないこと、法的に禁じられた違法な結婚の規定、非ユダヤ人からの犠牲の拒否や非ユダヤ人が偶像に用いていた金属の再利用の拒否、神殿へ入れてはいけない不浄物の規定、犠牲は神殿自体ではなく祭司に属すること、そして妊娠した動物を殺すことの禁止などについて、両者は似た見解を持っている。これは翻ると、パリサイ派的・ラビ的アプローチの反対であり、サドカイ派的といえる。

『律法』と『詞華集』とは、異邦人や改宗者が終末のときに神殿に入ることを禁じている。ただしこれは神殿に入ることと同時に結婚のことも意味しているとも考えられる。これについて、『詞華集』と『神殿巻物』とは神殿へ入ることを禁じており、パリサイ派的・ラビ的伝統は結婚を禁じている。そして『律法』は両方の意味で取っている。共通のハラハー的問題を扱っているのは明らかだが、それぞれの文書が直接の影響関係を持っているわけではなさそうである。

第三部に関して。第二部では語りかける対象が複数形だったのに対し、第三部では単数形になっている。ここから論文著者は、複数形の呼びかけのときは、この文書の著者のかつてのサドカイ派の同僚で神殿に残った者たちを指しており、単数形の呼びかけのときは、第一神殿時代のイスラエルの王たちと比べられる当時の特定の支配者を指していると考えた。第三部は、主として申命記を下敷きにして、イスラエルによる神の裏切りや、その改悛による神からの救いなどについて説明されている。ここからは明らかに『神殿巻物』との類似性が指摘される。両者は共通のサドカイ派の法的・神学的伝統を受け継いでいる。ただし、直接の影響関係があるかどうかは分からない。

こうしたことから、『律法』は明らかに『神殿巻物』、『ダマスコ文書』、そして『詞華集』などとの共通点を持っており、それらは明らかにサドカイ派的伝統に立脚しているといえる。ただし、『律法』と『神殿巻物』にセクト的敵対心が希薄なのに対し、エルサレムからの分離のあとの文書である『ダマスコ文書』には濃厚である。つまり、『律法』は比較的初期のセクト的律法であるといえる。

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