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2014年10月22日水曜日

トセフタとミシュナーとの関係 Zeidman, "An Introduction to the Genesis and Nature of Tosefta"

  • Reena Zeidman, "An Introduction to the Genesis and Nature of Tosefta: The Chameleon of Rabbinic Literature," in Introducing Tosefta: Textual, Intratextual, and Intertextual Studies, ed. Harry Fox and Tirzah Meacham (Hoboken, NJ: Ktav Publishing, 1999), 73-97.
0881256374Introducing Tosefta: Textual, Intratextual, and Intertextual Studies
Harry Fox
Ktav Pub Inc 1999-09-01by G-Tools
一般的に、ミシュナーの補遺と見なされているトセフタは、位置づけの難しい書物である。ミシュナー文学の領域に入れるべきか、タルムード文学の領域に入れるべきか、答えは簡単ではない。中世以来の定説では、トセフタは書物としてのミシュナー成立の一世代あとに、ラビ・ヒヤ(バビロニア生まれだったが、パレスチナに移住し、ラビ・ユダ・ハナスィのもとで学んだラビ)によって編纂されたものとされている。しかし、特に近代の研究者の中には、トセフタの成立をタルムード以後と考える者たちもいる。つまり、トセフタの成立について、ミシュナー成立のすぐあとくらいのより古い時代と考える者たちと、タルムード以後のよりあとの新しい時代と考える者たちがいる。

より古い時代と考える者たちは、中世より枚挙の暇がない。ラビ・シェリラ・ガオン、ラベヌ・ハナンエル、ラビ・ナタン・ベン・ラベヌ・イェヒエル、ラビ・ユダ・ハバルセロニ、ラシ、マイモニデス、メイリなどが代表である。同じ立場を取る近代の学者たちは(M.S. Zuckermandel, A. Spanier, A. Guttmann, Y.N. Epstein, B. Cohen, M. Moreshet, Y. Kutscher, B. DeVries, B.M. Bokser, J. Hauptman, D. Halivni, A. Goldberg, J. Neusner)、仮にトセフタに収録されている伝承に、タルムード中のバライタと同じ伝承=新しいものが含まれていたとしても、それはトセフタをタルムードに合わせて後代に改訂した結果であって、トセフタそのものが新しいものなのではないと主張した。一方で、トセフタとタルムードのバライタが異なることがあるのは、それぞれ別のソースを持っていたからだと結論付ける者もいた。一方で、より新しい時代と考える者たちは(D. Hoffmann, L. Friedlaender, J.H. Dunner, A. Schwarz, Ch. Albeck, S. Lieberman, Y. Elman)、トセフタの成立をアモライーム時代よりあと、すなわち両タルムードよりあとのこととしている。

両者は意見を異にしているが、いずれも、トセフタをタルムードとの関係の中に置いているところでは共通している。しかし、本論文筆者は、むしろトセフタはミシュナーとの関係の中に置くべきだと主張する。しかもそのとき、両者が「対位法(counterpoint)」を奏でているように考えるべきというのである。Neusnerのように、トセフタはミシュナーを拡張したものであり、一方ミシュナーはトセフタを要約したものと言うこともできるが、実際はElmanが述べているようにもっと複雑で、両者が相互に改訂していき(interactive redaction)、共存しているのである(symbiotic redactional scheme)。そのために、著者は、ミシュナーに対するトセフタからの付加の例、両者が対位法的に相互に作用している例、トセフタがミシュナーと関係せず独立している例などを挙げている。ただし、ミシュナーなしにトセフタを読むことができない箇所があるため、トセフタの方がより後代のものであることは変わらない。

3 件のコメント:

  1. いつも勉強させていただいております。

    これまでトセフタの成立はタルムード以前だと無批判に考えていまして、不勉強を恥じています。

    >より新しい時代と考える者たちは(D. Hoffmann, L. Friedlaender, J.H. Dunner, A. Schwarz, Ch. Albeck, S. Lieberman, Y. Elman)

    本論文の中で、彼らの主張の具体的な根拠は何か言及されていますでしょうか?

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  2. Bar Kokhba 59/2様、コメントありがとうございます。私もよく分かってないので、分かった限りで以下お答えします。LibermanとElmanがより新しい時代と考える代表選手なのですが、彼らはY.N. Epsteinの説に依拠しています(ただしEpstein自身はより古い時代と考える学者のひとりですが)。Epsteinは、バビロニア・タルムード中のバライタがトセフタとしばしば異なる理由として、バビロニアのラビたちがUr-Toseftaの伝承を口頭で伝えていき、のちにOur Toseftaができたからと説明しました。Liebermanはこれを受けて、バビロニアにUr-Toseftaがあったことは認めつつも、トセフタ自体にバビロニアとパレスチナとの区別があったことは認めませんでした。そしてパレスチナ・タルムードに対するトセフタの影響が部分的にしか見られないことから、トセフタが成立したのはパレスチナ・タルムードよりあとと考えたそうです。詳細は、論文をご参照ください。

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  3. なるほど。ありがとうございます。

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