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2016年10月5日水曜日

オリゲネスのユダヤ教知識 De Lange, Origen and the Jews #4

  • Nicholas de Lange, Origen and the Jews: Studies in Jewish-Christian Relations in Third-Century Palestine (University of Cambridge Oriental Publications 25; Cambridge: Cambridge University Press, 1976), pp. 39-47.
割礼、食餌規定、祭りなどのユダヤ法遵守について、オリゲネスは新約聖書やヨセフスといった二次資料からのみならず、実際のユダヤ人という一次資料からも知るすべを持っていた。オリゲネスの活躍した時代が『ミシュナー』編纂のすぐあとであることから鑑みて、彼のハラハ―に関する知識は、ユダ・ハナスィーの弟子たちから直接学んだものである可能性がある。そうした痕跡は、特に『諸原理について』と『フィロカリア』などの中に見出すことができる。

たとえば、安息日の遵守に関しては、出16:29における基礎的ルールのみならず、安息日であっても移動することができる境界である2000キュビトに関するエルブというルールについても言及している。

食餌規定については、オリゲネスは聖書の規定以上のことは特に述べてはいない。しかし彼は、マコ7:11における「コルバン」という言葉に関して、ユダヤ法における不良債権の回収や社会的な義務の放棄の知識を持っていた。

『ケルソス駁論』を読むと、オリゲネスがラビ・ユダヤ教的な議論をしているのに対し、ケルソスはより自由で折衷的な非ラビ的なユダヤ教に基づく議論をしている。言い換えれば、ケルソスの議論はヘレニズム的で混淆的なのである。従って、ケルソスが依拠しているユダヤ人は、ギリシア哲学や他の宗教に由来する思想を濃厚に持っていたと言える。対して、オリゲネスは意図的に自身の議論を、律法を重んじる特定のユダヤ人に限定していたのだった。

オリゲネスは、エジプトのグノーシス主義をユダヤ教的な霊理解に繋げており、ケルソスはサタンやロゴスについて語っている。これらはラビ文学にも見られるものではあるが、どちらかというフィロンをその導き手としていると考えられる。

オリゲネスは、ラビ的な神の複数の神格について語っている。これは、ミニームらの考え方を基にしていると考えられる。ミニームとは、ユダヤ教の異端やグノーシス主義者、ヘレニズム的ユダヤ人、ユダヤ・キリスト者、そしてキリスト者のことをさえ指す漠然とした用語である。

他にも、オリゲネスは神人同型説、創造論、報いと罰、復活論、死後の生、メシア論について言及している。

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