2011年11月27日日曜日

ヒエロニュムスの絵いろいろ

先日大学で本をコピーしていたら、強烈なヒエロニュムスの絵が出てきたので、思わずスキャンしてしまいました。


死にそうな顔でピースしてますね。目のところは印刷が潰れてるだけかもしれませんが、死体に無理やりピースさせているような気持ち悪さがあります。ちなみにこの絵は次の論文(238頁)に載っていたものですが、私はイタリア語が読めないので詳細は分かりません。

● G. Biasiotti, "Le memorie di S. Girolamo in Santa Maria Maggiore di Roma," in Miscellanea Geronimiana: Scritti varii pubblicati nel XV centenario dalla morte di San Girolamo, ed. V. Vannutelli (Rome: Tipografia Poliglotta Vaticana, 1920), 237-45.

本文から類推するに、どうやらサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂にあるラテン語のヴァティカン写本5074の142葉に書かれている絵のようですが、確証はありませんので、ご興味ある方はぜひこの論文を読んでみてください(そして私に教えてください)。

他にもヒエロニュムスを描いた絵画にはおもしろいものがいろいろあるので、ついでに挙げておきます。

これはロヒール・ファン・デル・ウェイデン(1400-1464)の絵ですが、ヒエロニュムスの隣にいるこの奇妙な生物は何なんでしょうか。毛の生えたダルマのようにも見えますが、ご存知のようにヤコブス・デ・ウォラギネ『黄金伝説』のヒエロニュムスの話にちなんだライオンです。ライオンというよりは人面猫のようですが。おそらくファン・デル・ウェイデンはライオンを見たことなかったんでしょう。

ライオンということでは、アルブレヒト・デューラー(1471-1528)のライオンもやや人面猫風です(「書斎のヒエロニュムス」などではライオンも上手に描けているんですが)。

『黄金伝説』のヒエロニュムスの話(第140話、邦訳では第4巻に収録)とは、次のようなものです。あるときヒエロニュムスの修道院に足を引きずったライオンが入ってきたので、修道士たちはみんな逃げ出してしまいましたが、ヒエロニュムスだけが怖がらずにライオンに近づくと、足に刺さっていた棘を抜いてやりました。それからそのライオンは修道院に住みつくようになり、ロバの放牧の仕事をまかされるようになります。しかしあるときうっかりライオンが眠ってしまった隙に、商人たちがそのロバを盗んでしまいました。手ぶらで帰ってきたライオンを見て、修道士たちはライオンがロバを食い殺してしまったのだと思い、罰としてライオンにロバの仕事をさせました。ライオンがロバを探しにいくと、そのロバを連れた商人たちの一向に偶然出くわしたので、彼らにとびかかり、荷物ごとロバを奪い返すことができました。それらを持って修道院に帰ると修道士たちの誤解も解け、ヒエロニュムスはあたたかくライオンを迎えてやりました。また、ロバを盗んだ罪で神に罰せられたと考えた商人たちも修道院に贖罪にやってきたので、ヒエロニュムスは彼らもあたたかく迎えてやったそうです。
この逸話からヒエロニュムスの絵にはライオンが書かれることが多いので、題名がついてなくても描かれている人物がヒエロニュムスだと分かるわけです。

ライオンもそうですが、ヒエロニュムス自身の描き方に関しても画家によってさまざまで、上のデューラーや、

このルーベンス(1577-1640)のような筋骨隆々の「荒野のヒエロニュムス」のイメージから、

ドメニコ・ギルランダイオ(1449-1494)のインテリ風ヒエロニュムス、

ヴィットーレ・カルパッチョ(1455-1525)の修道院長然としたヒエロニュムス(と、逃げ惑う修道士たち)、

 サセッタ(1392-1450)の枢機卿(あるいは赤ずきんちゃん)風ヒエロニュムス、

レンブラント(1606-1669)の田舎の農夫風ヒエロニュムス、

後代ではローレンス・アルマ=タデマ(1836-1912)のさわやか若者風(左はパウラ。ちょっと色っぽすぎやしないでしょうか)など、ヒエロニュムスを描いた絵画はさまざまありますが、何といっても最も奇妙でかつ印象的なのは、

ご存知レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)のヒエロニュムス(ガンツ風?)ではないでしょうか(ヴァチカンで本物を見たことがあります)。これは未完成の絵だそうですが、妙につるつるしたテクスチャが人体模型のような感じさえします。この絵こそ、ライオンが書かれていなければ誰もヒエロニュムスだとは分からないでしょうね。

今回はたまたま論文に載っていた絵がおもしろかったので、思いつくままにいろいろヒエロニュムスの絵を挙げてみましたが、もちろん他にもかなりたくさんの絵があるので、いずれ体系的に分類してみたいですね。またこれからヨーロッパなどあちこち行くたびに、ヒエロニュムスの絵に注意して美術館を見てまわりたいです。ちなみに私が自己紹介のところでアバターとして使っているのは、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)の「手紙を読む聖ヒエロニュムス」という絵で、数年前に国立西洋美術館で開催されたラ・トゥール展で見たとても好きな絵のひとつです。

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