2014年4月8日火曜日

タルグム・オンケロスにおけるアガダー Vermes, Haggadah in the Onkelos Targum

  • G. Vermes, "Haggadah in the Onkelos Targum," in idem, Post-Biblical Jewish Studies (Leiden: Brill, 1975), pp. 127-38.
Post Biblical Jewish Studies (Studies in Judaism in Late Antiquity, V. 8)Post Biblical Jewish Studies (Studies in Judaism in Late Antiquity, V. 8)
Geza Vermes

Brill Academic Pub 1975-06
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タルグム・オンケロスに関する論文を読みました。パレスチナ・タルグム研究に関しては、Paul Kahleによる、カイロ・ゲニザで見つかったフラグメントの出版(1930)や、Alejandro Diez Machoによる、ネオフィティ写本の発見(1956)など、非常な進展がありましたが、オンケロス研究に関しては、Alexander Sperberによる校訂版の出版(1959)や、Diez Machoによるヴァチカンの写本448に関する研究(1954)など、インフラは整えられているにもかかわらず、あまり進展しませんでした。それは、自由度の高い翻訳であるパレスチナ・タルグムに比べて、逐語訳的と考えられているオンケロスは、ユダヤの聖書解釈の研究に資する所が少ないと考えられていたからでした。オンケロスが多少ともヘブライ語と違うところがあるとすれば、神の擬人化をなくすためのパラフレーズに加えて、1)比喩的な表現の簡潔化、2)古代の地名のアップデート、3)父祖やモーセの理想化、などが挙げられます。

しかし一方で、オンケロスにもある種の自由翻訳された箇所があることも知られていて、A. Berlinerは創世記から17箇所を上げていますが、Vermesは、反擬人化と、ほぼ丸一章がミドラッシュ的に書かれた創世記49章を除いてもなお、60箇所以上も発見できると述べています。彼はそこから12箇所をしぼって、この論文の中で解説しています。Vermesによると、オンケロスに見られるアガダー的翻訳は、次の二種類に分けられます。
  1. テクストの言語上の困難さゆえのアガダー的解釈
  2. 教義上の関連性からもたらされたアガダー的解釈
正直なところ、Vermesが考察している具体例には、前者ともいえるし後者ともいえるようなものも多いので、この分け方はあまり意味がないように思えます。あくまで参考程度に分けているのだと思います。特筆すべきは、ほとんどどの例でも、アガダーそのものというより、アガダーを濃縮して保存しているパレスチナ・タルグムからの影響がみられることです。

これらの12箇所を考察した結果、Vermesは次の3つの結論に至ります。第一に、オンケロスの翻訳は、原文に問題がない限り逐語的に進んでいきますが、何か問題があるとヘブライ語から離れ、論理的・神学的に受け入れ可能なかたち、すなわちアガダー的な解釈を導入する。第二に、オンケロスがパレスチナ・タルグムの伝統に依拠しているのであって、パレスチナ・タルグムがオンケロスに依拠しているわけではない。第三に、第二の結論より、オンケロスは純粋なバビロニアの伝統の産物(A. Geiger, P. Kahle)ではなく、パレスチナ・タルグムの伝統をバビロニアで編纂した結果の産物である。オンケロスというと逐語訳というイメージがありますが、Vermesは、パレスチナ・タルグムの自由翻訳からの大きな影響を認めています。

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