2011年9月6日火曜日

ヴェルメシ『解き明かされた死海文書』

新刊のゲザ・ヴェルメシ(守屋彰夫訳)『解き明かされた死海文書』(青土社、2011年)を読んでいます。

解き明かされた死海文書解き明かされた死海文書
ゲザ・ヴェルメシ 守屋彰夫

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ヴェルメシは、死海文書の英語完訳(The Complete Dead Sea Scrolls in English)でも知られる死海文書研究の第一人者で、何といっても死海文書に関して世界で初めて学位論文を書いた人でもあります。本書はそのヴェルメシがペンギン・ブックスから出した死海文書の概説本で、死海文書発見の顛末、研究史、内容などが平易ながらも正確に説明されています。

死海文書自体の問題が興味深いのは当然として、本書が魅力的なのはヴェルメシ自身の自己紹介や回想が随所に織り込まれているところではないでしょうか(そこが「鼻につく」と感じる人もいるようですが)。1924年にハンガリーの改宗ユダヤ人の家に生まれたヴェルメシは、ホロコーストで両親を失い、自身も命からがらベルギーに逃げ込むことで九死に一生を得ます。そのときのことを彼は次のように記しています。
私を受け入れ、10月始めにルーヴァンでの入会訓練課程への出席義務を知らせる手紙が6月2日に私の手許に届いたのはほとんど奇蹟だった。ちょうどその日に、私はルーマニアからハンガリーへ秘密裏に夜陰に乗じて越境する計画だったのである。もしその貴重な封書があと僅か24時間輸送の過程に留まっていたならば、ルーマニアとハンガリーという2つの非友好的な国家間には当時は輸送関係が存在しなかったので、私の手許に届くことは十中八九なかっただろう。ルーマニア国境警備隊を回避しようとしていた原野でこの自由への事実上のパスポートを絶対紛失しないようにルーヴァンからの封書が入ったポケットをしっかり手で守り続けていたことを私は明瞭に覚えている。(20頁)
すさまじい文章ですね。このようにして何とか聖書研究の端緒についたヴェルメシに、一大転機が訪れました。死海文書の発見です。
1948年4月、ASOR(アメリカ・オリエント学研究所)とスケーニク(エレアザル・リパ・スケーニク、ヘブライ大学教授)の両者が発見のニュースを公表し、あらゆる報道機関によって世界中に伝えられた。〔……〕興奮は野火の如く広がった。筆者自身の生涯にわたるクムランとの関わりはこの画期的な時に遡る。それは筆者の学問上の初恋事件であった。(39頁)
死海文書とのこうした衝撃的な出会いが、その後のヴェルメシの学問的な目標を決定しました。本書が単なる死海文書の概説本ではないのは、こういうところではないかと思います。訳者の守屋氏の訳文も読みやすく、300頁ほどの短い本でもあるので、ご興味ある方はぜひ。

The Complete Dead Sea Scrolls in English: Seventh EditionThe Complete Dead Sea Scrolls in English: Seventh Edition
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