- Matthew J. Goff, 4QInstruction (Atlanta: Society of Biblical Literature, 2013), pp. 1-29.
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『4Q教育』は、クムランで発見された最も長い知恵文学である。425以上の断片があるが、重要なのは15ほどである。こうした断片は、おそらく7から8つの写本に由来すると考えられている。『4Q教育』には物語などはなく、教訓的な教えがゆるやかに集められている。宗派的な用語への無関心から見て、作者も、想定される読者も、おそらくクムラン共同体の者たちではない。一方で、読者たちは何らかの別の宗派だったとも考えられる。成立は、黙示的な要素が含まれていることから見て、前2世紀と考えられる。
重要なキーワードとして、רז נהיה(the mystery that is to be)は「教えの受け手に明らかにされた超自然的な啓示」を、מבין(understanding one)は「教えの受け手である学び手」を、אוטは「受け手に入手可能な素材(?)」を、המשיל(to give dominion)は「神がメビンに栄光の遺産を遺すこと」を、חפץ(desire)は「受け手が物質を求めること」を、מחסור(lack)は「受け手が物質を得ることができないこと」を、מולד(birth time)は「ある者が生まれたときのしるし」を、פקודה(visitation)は「終末の裁き」を表わしている。
スタイルとしては、二人称単数で受け手であるメビニームに語り掛けている。この二人称単数は修辞的な工夫として、相手に対してより人間的に語り掛けている印象を与える役割を持っている。他にも、パラレリズムや独特の接続詞の用法などが『4Q教育』のスタイル的特徴として挙げられる。
ジャンルは教訓的文学であり、特定のトピックに関する教育を与えつつ、読者が知識を学び得たいと思うようにしている。扱う内容は日常的なことから思索的なことまであり、箴言、ヨブ記、コヘレト書、『ベン・シラ』、『ソロモンの知恵』などとの類似が見られる。教えの受け手がメビンと呼ばれていることから、誰か学び考えている者に対して語り掛けていることが分かる。箴言と『4Q教育』とが、似たようなイメージを用いて金銭に関わる教えを説いていることから、後者の著者は箴言を読んでいたと思われる。
啓示、終末、決定論。『4Q教育』で重要な用語はラズ・ニヒイェである。これはヘブライ語聖書には出てこず、それ以外のユダヤ文学では『4Q謎の書』に二回と『共同体の規則』に一回出てくるのみである。この用語は終末論的な裁きと関連しており、それまでに学ばれなければならないことや、受け手が知恵を獲得するための方法を意味する。ラズという語はダニエル書や『第一エノク書』などといった黙示文学でしばしば用いられており、天に由来する知識を表わし、それに二ヒイェがつくことで、明らかにされた謎が過去・現在・未来までのすべての時間に関わっていることを表わしている。
メビン。『ベン・シラ』が知識層を相手にしているのに対し、『4Q教育』が語り掛けるメビンは、借金の方法などが扱われている点から見て、農夫や職人のような貧しい者たちである。それゆえに、『4Q教育』は宴会でのエチケットや権力者の前でのスピーチなどについては語らない。ただしこのときの「貧しさ」とは、経済的な貧しさのみならず、倫理的な貧しさをも意味することがある。教えを受けたメビンたちは、天使たちの住む天的な世界へと入り得る資格を得る。その時点でメビンは肉体のある霊ではなくなる。メビンが天使的な力を持つことで、第一に、なぜ天的な啓示が彼に示されたかが分かり、第二に、祝福された死後の世界を持つ可能性を得る。創1-3のエデンの園の逸話に従い、『4Q教育』は、メビンがラズ・ニヒイェの学びを通して善悪の知識、すなわちアダムが園においてもともと持っていた知識を得ることができると説明する。
黙示的な世界観を持った知恵文学。『4Q教育』に見られる終末論や死後の世界といった黙示的な世界観は、箴言のような知恵文学とは遠いものである(『ベン・シラ』や『ソロモンの知恵』にはある程度の黙示的要素が見られる)。『4Q教育』においては、知恵文学的伝統と黙示文学的伝統がはっきりと繋げられているのである。しかも、他の古い知恵文学は、神とその創造を理解するために、理性的な考察を超える方法を用いようとするが、『4Q教育』はラズ・ニヒイェを学ぶことで世界を理解すべきだと主張する。とはいえ、『4Q教育』を初期ユダヤ知恵文学から外れたものと捉えるのではなく、そのジャンルがいかに広い幅を持っていたかということを考えるべきである。この伝統はマタイ福音書やルカ福音書にも通ずる。
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