2016年5月8日日曜日

ヘラクリトスと寓意的解釈 Konstan, "Heraclitus: Homeric Problems"

  • David Konstan, "Introduction," in Heraclitus: Homeric Problems, ed. Donald A. Russel and David Konstan (Writings from the Greco-Roman World 14; Leiden: Brill, 2005), pp. xi-xxx.
Heraclitus: Homeric Problems (Writings from the Greco-Roman World)Heraclitus: Homeric Problems (Writings from the Greco-Roman World)
David Konstan Heraclitus D. A. Russell Donald A. Russell

Society of Biblical Literature 2005-06-30
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後1世紀から2世紀の間に書かれたと考えられているヘラクリトス『ホメロス問題』は、ホメロスが神々について述べていたことは寓意的に解釈されるべきであり、その内容は例えばストア派の神観にも比されるべき高度な内容だったと主張することによって、ホメロスが受けていた非難から彼を救出することを目的として書かれた書物である。

寓意的解釈の始まり。寓意的解釈とは、前1世紀のトリュフォンの定義によれば、あることを適切な意味で表現するが、一方で類似性によって他の何かの概念を供給するような言葉やフレーズのことである。ヘラクリトスは、この寓意的解釈を用いて、宗教的敬虔さに関するホメロスの悪評判を解消しようとしたのである。寓意的解釈をホメロスに適用した者として、最も古い記録は、前6世紀のレギウムのテアゲネスである。同様の解釈は、フェレキュデス、メトロドロス、コロフォンのクセノファネスらによっても試みられていた。しかし、彼らよりも古くからホメロスの寓意的解釈は存在したはずだと考えられている。

ホメロスの権威。プラトンは、ホメロスはすべての学芸の権威であり、すべての種類の知恵の源であると考えていた。ストラボンは、ホメロスは地理学の創始者であると考えていた。ストア派の哲学者たちは、ホメロスのことを哲学的教えの証人あるいは源泉であると見なしていた。なぜなら、ストア派は賢者のみが真の詩人だと考えていたからである。

寓意的解釈の本質。ホメロスの詩の一節は、しばしば古代の批評家にとっても不明瞭だった。それを何とか解釈するために、彼らは換喩的解釈や、語源学を用いた。プルタルコスによれば、古代の詩人たちが神々のイメージを用いたのは、概念を表す特定の用語を持っていなかったからであるという。

神話へのアプローチ。ストア派やキュニコス派は、ホメロスの描く徳のある行為のモデルを求めた。すなわち、知恵や忍耐の模範となるような人物をホメロス作品の中に見出そうとするのである。これはホメロス擁護にもつながっている。なぜなら、アキレウスやオデュッセウスのような英雄は、彼らを描いた詩人自身の清廉潔白さのしるしになるからである。ただし、神話を合理的に解釈することのすべてが寓意的解釈へと行きつくわけではない。パライファトスやエウヘメロスらは、神話への歴史的アプローチを取った。またオルフェウス教のような宗教的カルトは、ホメロスやヘシオドスのオリュンポスによって描かれる神々の寓意的解釈よりも広い間口を持っていた。プラトンは、『プロタゴラス』などにおいて、伝統的な神話の寓意的解釈を行なっているが、ホメロスによる神理解に含まれる不敬虔を非難したのだった。

プラトンによるホメロス批判。『国家』第2巻において、プラトンはホメロスを批判した。彼によれば、神話の中に真実を含むものがあることは確かであるが、若者はそうした物語における暗黙の意味をきちんと読み取ることができない。それゆえに、こうした詩は皆の前で朗誦されるべきではない、というのである。キケローやプルタルコスなどのプラトン支持者はこれに従った。これに対し、ストア派はホメロス擁護にまわった。ゼノン、クリュシッポスなどはホメロス解釈において、寓意的解釈を用いてその神学を強調することによって、彼を擁護した。後代のヘラクリトスは、プラトンもエピクロスも、共にホメロスに自分たちの教えの基礎を置いているのだから敬意を持つべきだと反論した。

寓意的解釈の種類。本来の寓意的解釈の他に、換喩法、語源学、歴史的出来事における神話の起源の探究、徳の模範としての英雄像の模索、倫理的・哲学的教えを支えるようなホメロス引用の整理などが挙げられる。これらはみな、ホメロスが不敬虔であるという言説に対する反論として、またホメロスがすべての学術において万能であることの証明として、そして表面的な意味と異なる謎めいた一節の説明として機能した。これらの解読法によって、隠された意味が明らかになる。しかもその隠された意味は、教育的な効果へと高められるのである。

Wolfgang Bernardは、寓意的解釈を、「代替的寓意(Substitutive allegory)」と「分割的寓意(Diaeretic allegory)」とに分けた。前者は、物語の登場人物と、抽象概念やエレメントとが、一対一対応になるものである。これはストア派やヘラクリトスに見られる。一方後者は、個別の登場人物ではなく、エピソード全体が寓意化されるものである。こちらはプルタルコスのようなプラトン主義者に帰される方法である。オリュンピオドロスのような新プラトン主義者は、より体系的に寓意的解釈を用いた。

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